名女優 市原悦子さん逝去を悼む

新年早々、とても悲しいお報せでした

昭和～平成と60年に及ぶ女優人生を歩まれてきた。。。

市原悦子さん



既報の通り、82歳で亡くなられました

「まんが日本昔ばなし」や「家政婦は見た」「おばさんデカ」
と言った息の長いテレビ・シリーズでの名演が有名ですが、
我々の世代は「まんが日本昔ばなし」では高校生、ドラマ・
シリーズでは社会人でしたので、テレビの前に座ることは叶わ
ぬ時間帯でした

むしろ映画での何とも言えぬ存在感のある役を演じられていた
個性溢れる女優さんと言うイメージが強い方でした

数多くの映画に出演されていた市原さん、特に「黒い雨」での
印象が強く残っている方々が多いかと思いますが、極私的には

以下の２作品での印象が強烈且つ鮮烈に残っています

１本はコチラ
名優 勝新太郎＆ミスター財前五郎こと田宮二郎の名コンビで一世を

風靡した映画「悪名シリーズ」の第１３弾「悪名桜」


さすがに１３作目ともなるとマンネリ感は否めませんがそこは
ご存知このお二人のことでもあり、毎回、今では「超」がつく
個性的なキャスティングで観る人を笑わせてくれます
今回はお二人で焼き鳥屋さんを営んでおられます


ＤＶＤのラベル、一番奥で仕込みを手伝っているのが市原さん

勝先生、もう一方の代表作「座頭市シリーズ」同様の完璧なる
「予定調和」を前提としての楽しみがこの２シリーズには正に
完璧に刷り込まれています

本作での市原さんは朝吉親分の幼馴染で亡くなった朝吉の父親
公認の許嫁（朝吉は知らないが）で登場。。。朝吉の子供を宿し
たとウソをつき、許嫁もウソ、行きずりの男との間に宿した子を
本人共々面倒見てもらおうと考えていた図々しい幼馴染と言う
役柄（菊枝と言う役名）

ところがこれが全く憎めず、したたかさも感じられないほどに
素朴な女性で朝吉や晴次を甲斐甲斐しく面倒見るのです

白眉は朝吉と一緒に小料理でのシーン。。。ここで菊枝は朝吉
のリクエストで河内音頭を歌うのですがこれがまた最高

もともと透き通る様な声を持つ市原さんが歌う河内音頭は聴いて
いて少しの違和感も感じられない名調子

このお二人にはこの作品の２年後、名匠勅使河原宏監督による
「燃えつきた地図」と言う大傑作があります




そしてもう１本は、これまた正反対の「イヤな女」をしっかり
演じた。。。。

「木枯し紋次郎　関わりござんせん」


ご存知　あの中村敦夫さんを一躍全国区にした市川崑演出
による、バリバリにマカロニウエスタンな時代劇

「必殺仕掛人」と共に毎週土曜日の２２時台を大いに楽し
ませてくださいました

で、こちらは映画版の方です
こちらはご存知「仁義なき戦いシリーズ」で超ブレイク寸前
の菅原文太兄いがテレビ版紋次郎とはまた違ったテイストを
醸しだした隠れ名作の第２弾

なんと本作で市原さんは紋次郎の実のお姉さん（お光）と言う
重要な役どころを、狂気に満ちた演技でハンパない存在感と
嫌悪感、寂寥感を醸しだしていらっしゃいます

紋次郎ファンなら誰もが知る彼の出自（出生の秘密）をベース
にした本作は原作者笹沢佐保さんの小説にはないオリジナル作
でありながらも、市原さんを筆頭に、伝説の女優中村英子さん
田中邦衛さん、大木実さんや名脇役の汐路章さんたちのスーパー
演技により実に締まった時代劇になっています
（後の東映ピラニア軍団も大挙出演）

とにもかくにも、この方の役作りと言うのは言葉に表現できない
ほどの凄いものだったのではないかと思います

晩年、樹木希林さんと佳作「あん」で共演されましたが名だたる
俳優さん、監督さんもした「余人をもって代えがたいほどの人」
と言わしめた樹木さんと唯一互角にスクリーンを「締める」ことの
出来た方だったのではと、残念なことしきりです

本日が告別式とのこと
昨日のお通夜も600人もの方々が弔問にいらしたそうです

我が国を代表する名女優さんがまた１人。。。本当に寂しいですね


あらためて、市原さんの名演をこの大画面で観てみたいです

ソニー ４Ｋブラビア KJ-65A9F